2016-11-19

その9:ヒッチピンレール&ナット接着

チェンバロの部材の中で最も強い力に耐えているのはヒッチピンが打ってあるレールです。
ヒッチピンは、ヒッチハイクのヒッチと同じ言葉で「ひっかける」という意味があり、文字通り弦をひっかけるピンです。

一本あたり3~5キロの張力がかかるとすると、レール全体ではかなりの力がかかり、常にボディから剥がされる方向にひっぱられています。
弦に対して角度が強くなる高音部や低音部は、単位面積辺りのヒッチピンの数が増えるので、直線の中音部のレールより大きな力がかかります。
ですので、このヒッチピンレールの接着は、響板への下への接着と側板への横への接着を、がっつり力を加えて圧着しなければいけません。

ヒッチピンレールの高さは、オリジナルに従うと響板を上から押し付ける力が強くなり過ぎるので、私はブリッジと同じ高さにしています。
ピアノで駒圧と呼ばれている響板への圧力は、強いほど、響板の自由な振動を抑えて弦のエネルギーを無駄にしてしまいます。
ヴァイオリンの駒にオモリをつけると音がミュートされてしまいますが、あれと同じ現象が生じてしまいます。

ピン板には、ナットを接着します。
このナットとブリッジの間の距離が、音の高さに関わる弦長になります。



私がコンサートの前夜に見る悪夢のNo.1は、遅刻してペコペコ謝る夢ですが、次が、ヒッチピンレールが剥がれ呆然とする夢…
ですので、ヒッチピンレールの接着は、どうか正夢にならないようにと、祈るようにクランプを締め付けています…

(9/23 加屋野木山)